エヴァのロンギヌスの槍は、アーサー王伝説に出てる!あらすじまとめ

エヴァンゲリオンで一躍有名になった「ロンギヌスの槍」。綾波レイが持ってましたね。あの槍が「キリストが十字架にかけられたときに使われた」ってことは有名ですが、ケルト神話のアーサー王伝説でもムチャクチャ重要な役割を果たしてたことはご存じですか?
このページでは、「アーサー王伝説、ロンギヌスの槍編」をご紹介します!
↑いろんなグッズがありますね。
ロンギヌスの槍とは?
まずはざっくり、「ロンギヌスの槍って何ぞや?」という方のために、簡単な説明を。
昔々、神の子イエスキリストはローマ人に捕まっちゃいました。当時キリスト教は「超アブねー新興宗教」って思われてたんですね。……当時の処刑はエグイです。キリストは孫悟空の輪みたいにイバラの冠をギチギチにはめられ、十字架に両手両足を釘で打ち付けられます!
この時点で「ギャーッ」って感じですが、まだ終わりません。下から脇腹のあたりを槍でグサッと!
この時、槍で突き刺したのがロンギヌスというローマ兵でした。だからその後、この槍は「ロンギヌスの槍」と呼ばれ、
「すべての罪を背負って天に召されたイエスキリストの血を受けた、聖なる槍」
ということで、「聖槍」となったのです(英語圏では運命の槍とも言います)。そのため、この槍からは今なお赤い血がしたたり落ちていて、止まることはありません。また、槍と一緒に「キリストが最後の晩餐で使った大皿、杯」も一緒に三点セットになって聖遺物とされてます。特に杯は「聖杯」といって、スペシャルに有名!セーラームーンにも出てましたよ。
要するに!ロンギヌスの槍、大皿、杯の三点セットは「キリスト教の超ミラクルなアイテム!」ってことですね!
バリン卿、謎の城でロンギヌスの槍発見!でも呪われちゃう
さて、ここから本題!アーサー王伝説のロンギヌスの槍についてお話します!
アーサー王に仕えている騎士の一人に、バリン卿という人がいました。この人、西洋の騎士には珍しく二本の剣を下げていることから「二本の剣の騎士」とも呼ばれてます。
さて、アーサー王の騎士たちは「一年間、あちこち冒険に出かけて行って、その土地で困ってる人を救う。そして聖霊降臨祭(キリスト教のお祭り。キリスト復活後に天から聖霊が降った日)になると、みんなが宮廷に集まって、それぞれの冒険譚を話すというのが習慣でした。
世界一分かりやすい!ケルト神話のあらすじ。アーサー王伝説編!
こうした習慣があったので、バリン卿も例に漏れずトコトコと旅をしていました。日が暮れたので、その辺の館に泊めてもらったのですが……。
なぜか、隣の部屋から「う~ん、う~ん、苦しい~!助けて~!」と、苦し気なうめき声が!
「あれは何です?」とバリン卿が館の主人に尋ねると、「それがですね、聞いてくださいよ!」と、主人は涙の告白。
「ここからすぐ近くに住んでるペレス王の弟は悪い騎士で、わたしが馬上試合で勝った仕返しに、息子に大けがをさせたんです。あの男の血を手に入れないと、息子のけがは絶対に治らないのです。でも、その騎士は魔術を心得ていて、姿を消すことができるので全然捕まりません」
この姿を消せる騎士、ガーロンという名前なのですが、バリン卿はこれまでの旅でたびたびこいつの悪事を見ることがあって知っていました。
「よし!わたしがガーロンを殺して、息子さんを救って見せます!」
と、親切なバリン卿は一大決心。そのままペレス王の城へ直行(といっても片道十五日かかりましたが)。
ペレス王の城では、今まさに大宴会の真っ最中。武器は全部受付でお預かりだったので取られちゃいましたが、バリン卿は密かに短剣を一振り懐に入れて、会場に侵入。すると果たして!ガーロンが色黒の顔を真っ赤にして酒を飲んでるところ。
「ここで殺したら大騒ぎだろうな~」
と思いましたが、ここまで来て引き下がれません!「やい、ガーロン!殺しに来たぜ!」と言うが早いか、短剣をグサリ!館の主人に「ほら、好きなだけ血をとって、息子さんに持ってけ!」と合図。
が、会場は大混乱です!中でもペレス王は大激怒!
「おのれ!なんで殺した!」
「殺して何が悪い!こいつが悪い男だからだ!」
「ええい、その悪い男はわしの弟だ!貴様こそ殺してやる!」
こうなったら売り言葉に買い言葉です!ペレス王は剣を抜いて、凄まじい形相で「待てー!」っと追いかける!バリン卿は王の剣を短剣で受け止めましたが、一撃で短剣はこなごなに……。
「やばいッ!何かほかに武器はないか……」バリン卿は見渡しましたが、あるわけないです。次の部屋へ、また次の部屋へ。階段を駆け上がり、また別の部屋へ。でも、どこにも槍一本ありません!
「おのれ!殺してやる!待たんか!」と、後ろから迫るペレス王の声。バリン卿は死に物狂いで走って、突き当りのドアの前へ来ました。そのとたん!
「入るな!お前は入る資格がない!」
と、頭の上から何者かの声。でも、このままじゃ死んじゃいます。逆らって押し入ると、そこで目にしたのは、世にも不思議な光景でした。
真ん中には寝台があり、誰かが横たわっていますが、頭から足先まで金の布で覆われて姿は見えません。寝台のわきには純金のテーブル。その上には見事な杯があって、杯からはまぶしい光が溢れていました。そして、何より不思議なのは、テーブルの上には一本の槍が、つるすものもないのに宙に浮かんでいて、その切っ先からは赤い血が絶え間なくしたたり、血は地面に落ちる前に消えてなくなってしまうのでした。
なぜかバリンは全身がガタガタと震え、恐ろしくなりました。しかし、真後ろでペレス王の足音が響いたので、ハッと正気に返り、槍に手を伸ばしました。
「触るな!お前には触れる値打ちがない!」
と、またあの声が響きましたが、もう遅かったのです。バリン卿は槍を掴んで、ペレス王をグサリと突き刺しました。
その瞬間!城がいきなり激しく振動し、ガラガラと崩れ落ちました。まるでバルスみたいに凄まじい突風と衝撃!バリン卿も倒れて気を失い、何日かたってようやく目を覚ました時には、おびただしい瓦礫と死体の中に転がっていたのでした。
ここへ、おごそかにやって来たのが、アーサー王の知恵袋、魔法使いマーリン。
「ああ、あなたは自分がどれほど大変なことをしでかしたか、分かってないのだ。バリン卿、あなたが汚したあの部屋に横たわっていらっしゃたのは、われらが主、イエスキリストその人だったのだ。テーブルにあったのは最も神聖な杯、聖杯。かたわらにあった不思議な槍は、兵士ロンギヌスがイエスのお身体を突き刺した聖槍だったのだぞ!」
「ええ!何で、そんなものがあの部屋にあったんです!」
「あのペレス王は、キリストの弟子、アリマタヤのヨセフの子孫なのだ。ヨセフはキリストの死後、これらの聖遺物を、ここブリテンに持っていらっしゃった。この国々の人々をキリスト教に改宗させるためにな。そして、代々の子孫が聖遺物をあの城、カーボネック城で守ってきたのだ。ところがお前が『災いの一撃』を加えたばっかりに、この周辺の何千人もの人が死に、聖杯はどこかへ失われてしまった。この国の幸福は奪われ、大きな危険にさらされているのだ」
と、こう言うだけ言ってマーリンは「バイバイ」と退場。バリン卿は一人残されて「そんな……!」と号泣。
その後、バリン卿が馬に乗って町や否かを通っていくと、マーリンの言った通り、「災いの一撃」はこの国全体に凄まじい破壊をもたらしていたのです。道々に死体が転がり、木も草も枯れ果てて大地は荒れ地と化し、生き残った人々はバリン卿を指さして、
「ああ、バリン!お前のせいだ!お前があの槍で災いの一撃を加えたばっかりに、この国は滅んだんだ!」
と、怒鳴りつけるのでした。
この後、バリン卿はそうと知らずに実の弟バランと戦って相討ち。「まさかお前だったなんて~!」と大泣きしながら死んじゃうという、可哀想すぎる死に方をしちゃいます。
とにかくこうしたいきさつで、聖遺物をまもっていたカーボネック城は荒れ地と化し、「ロンギヌスの槍」と「聖杯」は元あった場所から失われてしまったのでした。
アーサー王の円卓に聖杯出現!でも、いきなり消える
バリン卿が死んじゃってから何年も後。アーサー王は主都キャメロットの宮殿に、巨大な円卓を持っていて、この円卓に優れた騎士たちを迎えていました。この騎士たちを「円卓の騎士」と呼びます。
その年、たくさんある円卓の席がついに全部ふさがり、円卓の騎士はその最高潮を迎えていました。アーサー王が大いに喜んで
「ご覧、これほど素晴らしい光景があるだろうか。この世のすべての立派な騎士たちが、ここに集まっている」
と、言ったとたん。超自然現象が起こりました!
ピカッと雷が光ったと思ったら、円卓のちょうど真ん中あたりの空中に、ピカピカと光りながら聖杯が出現!騎士たちが「ワアッ」と驚いていると、聖杯はドロンと姿を消してしまいました。
アーサー王は「ああ、神様は素晴らしいものを見せてくださった。幸せなことだ」と言いましたが、騎士たちは「いや!これじゃ終わりませんよ。聖杯は消えちゃったじゃないですか。捜しに行きます!」と、やる気満々で、「命に代えても!」と、次々に旅立っていってしまいました。
アーサー王はガッカリ。「そんな……。せっかく円卓の騎士がみんな揃ったのに、みんな行っちゃうわけ?しかも、そんなワケの分かんないところに行ったら大勢死んじゃうに決まってるじゃん……」
アーサー王が心配した通り、この「聖杯探求の旅」で、円卓の騎士はゴロゴロ死にます!ゴールの聖杯は、あの謎の城「カーボネック城」にあるのですが、バリン卿の一撃で周囲が全部荒地に変わり、「その資格を持っている人でなければ、たどり着けない」ことになっていたからです。
バリン卿が死んだときには、まだ生まれていなかった「この世で最も清く、正しい騎士」がやって来るまで、カーボネック城の呪いは解けないし、誰も城を見つけることすらできないのでした。
むしゃむしゃ食べまくるランスロット。ガウェインは何も食べない
さて、多くの騎士たちがカーボネック城を目指しながら脱落していく中で、最初に城にたどり着いたのはランスロット卿とガウェイン卿でした。この二人、「アーサー王の騎士たちの中で最も優れている」と評判の騎士たちだったのです。
でも、心の正しいガウェインはともかく、ランスロットは「自分が一番優れた騎士ではない」ということを自覚してました。実はランスロット、もうずっと何年もアーサー王の奥さんグィネヴィアと不倫しまくってたからです。
「あれだけ罪を犯しまくって、神様に背いてるから、自分が聖杯を見つけられるわけがない……」
と、ランスロットは分かってました。
さて、さんざん道を進んで、ついに神秘の城カーボネック城にたどり着いた二人!中に入ると、大広間にはいっぱい御馳走があるし、美しい乙女がうじゃうじゃ。そして昔バリン卿に刺されたペレス王が、長椅子に横たわってました。実はペレス王、「ロンギヌスの槍」でぶっ刺されたため、何年も傷口がふさがらないという悲劇に見舞われ、ず~っと苦しみ続けなのです……(T_T)
「さあ、どうぞ、どうぞ」と御馳走を勧められた二人。ランスロットは「やったー!」と肉をむしゃむしゃ、女の子が持ってくるお酒をガブガブ。そのうちグーグーとテーブルで寝ちゃいました。一方ガウェインは何も食べず、水を飲んでるだけ。
と、そこへ奇跡が!
イキナリ、パッと扉が開いて、そこへ白い服の乙女たちがしずしずと入ってきたのです。先頭の乙女は銀の燭台を持ち、二人目の乙女はロンギヌスの槍を持っていました。その槍の切っ先からは、絶えず赤い血が滴っていますが、その血は地面につく前に消えてしまいます。三人目は金の大皿を持ち、その上にはどんな白よりも白いパンが乗っていました。そして最後に、聖杯を持った乙女がやってきました。その聖杯は白い絹をかぶせてありますが、その中から太陽のような光が溢れていました。
その場の誰もが恐れおののいて顔を伏せてしまいましたが、ガウェインは立ち上がって、「乙女よ、これはどういうことですか」と尋ねました。
すると乙女が「ついていらっしゃい」というので、ガウェインはその後ろから付いていくことに。と、ランスロットがイキナリ立ち上がってフラフラついてきましたが、意識はなく、眠っているのでした。
さて、螺旋階段をずっと上っていくと、昔バリン卿が入った、あの部屋がありました。乙女の行列とガウェインは入っていきましたが、ランスロットが扉の前まで来ると、バターンと閉まってしまいました。そこでランスロットはハッと目を覚まして、「ああ、神様!」と嘆きました。
中から乙女たちが「神様に栄えあれ!」と歌っている声が聞こえるので、聖杯や槍や大皿はここにあると分かりましたが、罪深いランスロットは入る資格がなく、しめ出されてしまったのです。
「神様、許してください。どうか少しでいいから見せてください」
と、ランスロットが泣きながら祈ると、扉がスーッと開いて、テーブルの上に皿と杯が、その上にロンギヌスの槍が浮かんでいるのが見えました。ガウェインはその前にひざまずいていました。しかし、乙女が聖杯を覆っている白い絹をとって、素晴らしい光が満ちたとたん、ランスロットは気を失ってしまいました。
ここへ、謎の隠者ナーシアンスが登場。おごそかに、こう宣言。
「ガウェイン卿が大広間でのあらゆる誘惑に打ち勝ち、さらに聖杯の乙女に質問したことによって、かつてバリン卿が『災いの一撃』を振り下ろした呪いは緩まった。しかし、まだペレス王の傷は治らぬし、カーボネック城も、荒れ地に住む人々も、まだブリテンの他の土地から隔離されたままである。しかし、安心するがよい。聖杯の騎士が訪れるのはまもなくだ。それで長い苦しみは終わるだろう」
ガウェインが外を見ると、それまで枯れ果てていた荒れ地には新しい緑が萌え出ていました。でも、ランスロットはその後なんと二十四日も気を失ってたのです。神秘体験も大変ですね(^^;)
ついに聖杯の騎士登場!お空に消えたロンギヌスの槍
ランスロットとガウェインが帰った後、パーシヴァルとボールズ、ガラハッド卿がカーボネック城へたどり着きました。このガラハッド卿は、ペレス王の娘エレインとランスロットとの間にできた息子です。エレインは元「聖杯の乙女」だったので、ガラハッドは生まれながらにして聖杯の関係者だったわけですね。
さて、三人がカーボネック城へ入ると、前と同じように大広間にはごちそうが並び、ペレス王は長椅子に横たわってました。今度は隠者ナーシアンスもいました。
宴会が始まりましたが、三人はごちそうに手を付けず、水を飲んでるだけ。と、そこへまたもや奇跡が!
乙女たちが燭台、ロンギヌスの槍、大皿、聖杯を持って歩いてきました。
行列が来ると、ガラハッドが剣を高くかかげ、ちょうど十字架のようにして「神の聖名において、お待ちください」と声を掛けました。
そして、ガラハッドが行列の先頭に立って、昔バリン卿が入った部屋へと歩いていきました。行列の最後には、パーシヴァルとボールズがペレス王を長椅子ごと持って運び、その後ろから隠者ナーシアンスが続きました。
そして部屋へたどり着くと、皿と燭台と聖杯をテーブルの上に置き、ロンギヌスの槍は宙に浮かびました。
ここで、ナーシアンスが衝撃の告白!
「神聖なる聖杯の騎士ガラハッド、聖杯の司祭であるわたしが、あなたに聖杯をお渡しします。さて、わたしはもう死んでもいいですね。実はわたしは、昔キリストの弟子アリマタヤのヨセフに酷いことをしたので、その罪で死ねなくなっちゃいました。それで、聖杯の騎士が来るまで、ずっと聖杯の司祭を務めなくちゃならなかったんです」
それでガラハッド、聖杯を持って口をつけてお酒を飲むと、ナーシアンスを抱いて額にキス。するとナーシアンスはコロッと死んでしまいました。
ガラハッドは次に、ロンギヌスの槍を持ってペレス王のところへ行きます。槍から滴る血が、傷あとの上にかかるようにすると、ペレス王はケロッと治り、涙を流して感謝。ついに健康体に戻りました!
それから、この間ずーっと後ろで立ちっぱなしだったパーシヴァルは、聖杯の乙女ブランシュフルール姫にプロポーズ。二人は結婚して、呪いの説かれたカーボネック城の城主になることに。ガラハッドはこの二人の仲人をしてやって、「神様、二人が幸せになれますように!」と祈りながら死んじゃいました。ガラハッドは、聖遺物の呪いを解くためだけに生まれてきたんですね。
ガラハッドが死んで、魂が天へ行くと、急に天から光がサッと差してきて、カーボネック城の屋根に降り注ぎました。そしてその光の中で、ロンギヌスの槍と聖杯は、天へピューンと飛んで行って、この世では二度と再び見ることはできなくなったのでした。
ガラハッドは死んじゃったし、パーシヴァルは婿入りしちゃったので、一人だけ残ったボールズがアーサー王のところに帰って、全部お話ししました。終わりッ!
まとめ
いや~、改めて書いてみると、何だか日本人には理解しにくい内容ですね~。特にバリン卿、なんでこんなひどい目に遭わなきゃならないのか……。
わたしはランスロットがなかなか好きです。強い騎士なのに、いつも後ろめたさがあって人間臭いので。
ロンギヌスの槍は数ある聖遺物の中でも、かなり特殊な遺物ですね。ここまで破壊的な威力を持っている聖遺物って、世界的にも珍しいのでは?今なおゲームやファンタジーの世界で人気があるわけですよね!
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